シャロレ―牛
フランスのシャロレー地方原産の、世界でも最大級に大きくなる品種と言われている毛の白い牛です。戦時中に役牛として世界に広まり、品種・血統の保存のためにシャロレー協会が作られたそうです。機械が発明されて役牛としての役目を終えてからも欧米で飼養され、肉用牛としてポピュラーな品種として知られています。
日本国内でのシャロレー牛飼養の歴史
日本では、戦後の北海道道南地方に「曽田シャロレー牧場」という牧場がつくられました。日本が島国であることから防疫面でも安全だということで、フランスのシャロレー登録協会と直にやり取りをし、認定を受けてシャロレー牛を輸入して飼っていたようです。シャロレー牧場が閉鎖されてからは、日本国内では大学などで品種の保存として数頭飼われていただけのようです。
私たちの牧場にやってきたシャロレー牛
10年ほど前から道東で独自にシャロレー受精卵を輸入し「道東の放牧地で白い牛が放れていたら素敵だろうな」と増やしてこられた方がおり、ひょんなことがきっかけで、ご縁を頂いて私たちの牧場にもやってくることになりました。シャロレーの生産者は、“しばらく増やしていきたいから”と、私たちの牧場へは雄子牛のみやってきます。
フードジャーナリストの山本謙治さんが書いて下さった記事がこちら(やまけんの出張食い倒れ日記)
シャロレ―はとっても人が好き
私たちの牧場では、主に日本短角和牛を使用しています。繁殖から育成、肥育まで一貫して飼っているので、お肉になる牛を飼う一般的な農家さん(繁殖農家さん→〈子牛市場〉→育成農家さん→〈育成市場〉→肥育農家さん→〈枝肉市場〉)のように牛のステージ毎に牧場が変わるのではなく、牧場で産まれた子をお肉になるまでずっと私たちの牧場で飼うので、日本短角和牛の性質はある程度わかっていますが、子牛でやってきたシャロレーちゃん達、子牛の時から大きくなっても、とーっても人懐っこいです。人が寄っていくと、真っ先に飛んできて顔を寄せ、舐めて遊んで~撫でて~とせがみます。笑 大きくなってからは私たちも用心しながらでないと、どーんと吹き飛ばされてしまいそうな勢いです。笑 私たちの牧場の短角たちは人懐っこいね、とよく言われるのですが、シャロレーと比べると控えめでやっぱり日本で飼われてきた和牛なんだな、なんて思います(余談ですが、私たちは日本で乳用種として飼われているジャージー種やブラウンスイス種も飼ったことがあるのですが、やっぱりそれらもシャロレー同様に短角牛を押しのけてぐいぐい寄ってくるタイプでした)。
シャロレ―のお肉と向き合ってみて
生まれて1~2ヶ月齢の子牛を導入して約2年、短角と一緒に飼いました。出荷を迎えたシャロレーはしっかりとした体型でお尻もモモも大きくなりました。初めてお肉として出荷したときはと畜場加工場へ飛んでいき、枝肉(半身で骨付きの状態のお肉)検品してみると、短角と同じエサで飼い、同じくらいの月齢で出荷すると肉質はサシが短角よりも少なく、ほぼ赤身肉でした。お肉の味は…とそわそわして、お肉として戻ってきて(と畜後1週間くらいで)すぐに牧場の皆でテーブルを囲み、お昼ご飯を兼ねて味見会をしました(私たちの牧場では、定期的に牧場の皆でお肉の味の確認会を行っています)。
その時のラインナップは①短角(通常の肥育)②短角(経産廃用牛)③シャロレーでした。①の短角肥育「うん、いつもの感じだね、おいしいね」②の短角経産牛(再肥育無)「経産牛はサシが入らなくて、焼き過ぎると身がきゅーっとなって、こんな感じなんだね」③いよいよシャロレー「・・・なんか味が薄くてモソモソする・・・?」ガーン お肉の担当販売は内心、どうしよう・・・どうやってお店のシェフさんたちに案内しよう・・・と青くなりました。けれども、短角も和牛の中では赤身質なお肉で、“ねかせる”ことの重要さをわかってきていたところでしたので、『きっとこの超赤身、寝かせたら絶対変身するはず・・・!』そう信じて試すことにしました。
1か月後、同じく牧場の皆を集めてお肉の味の確認会をしました。①その時出荷した短角肥育「うん、いつもの感じだね。何番系統?そうか、あの子は親もこんな感じで~」②なぞのお肉「!このお肉何?すごい美味しいね!短角?」「ふっふっふ・・・このお肉は1ヵ月前皆がう~んと言ったあのシャロレーくんだよ」「えー!」
料理人の方々とおいしい時期をさがして
あれから数年、年に数頭しか出てこないシャロレー牛。その度にシェフの方々にご案内してお使いいただいでは「どうでしたか?」とやりとりを重ねてきました。お肉の部位によってもおいしい時期に差があること、短角よりも寝かせておきたいこと、個体差ももちろんあること、まだまだ研究は続きますが、なんとなくつかめてきており、ご愛用頂けているシェフから「シャロレー牛次はいつ出ますか?」とのお問い合わせも多くいただけるようになりました。
お肉になったシャロレーをお店で召し上がって下さった山本謙治さんの記事はこちら(やまけんの出張食い倒れ日記)
その先の夢
「シャロレーは続けてほしい」とのお声を頂く中、世界中にはシャロレー牛はたくさんいるので、私たちの牧場ならではの牛づくりにも夢を馳せています。その足掛かりとして、シャロレー牛と黒毛和牛の交雑種(F1)“シャー黒”です。毛はグレーで鼻色も黒。顔つきや体型は黒毛っぽさが入り、純血シャロレーよりも小柄の傾向にあります。肉質はこれも個体差がありますが、純血シャロレーよりもいくらかのサシが入り、短角と同じくらいの扱いやすさ、食べやすさになります。
上田金穂代表はこの先にまだ高い夢を見ます。着実に進んでいます・・・